・・・トルストイが、彼の全精力の卓抜さ、逞しさを傾けて最後に到達した痛ましい無抵抗主義の教義の中には、実に、社会的崩壊の作用に対して何の科学的な客観的な洞察をすることの出来なかった彼の階級の良心と、「数百万の農民の抗議及び彼等の絶望」が反映してい・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・よいプロレタリア文芸の働き手はいつも必ず闘争においてひるむことを知らぬ卓抜周密な同志である。〔一九三三年六月〕 宮本百合子 「小説の読みどころ」
・・・この物語そのものが卓抜な若い女性の生活建設の物語であるばかりでなく、私に尾崎秀実という名とスメドレイという名とを教えた最初の本であった。「楊子は自分でものを書くようになったら『尾崎秀子』と改名するのもよいかと思います。お母さんの音とお父・・・ 宮本百合子 「人民のために捧げられた生涯」
・・・ 個人の才能ではローザのようにとびぬけたものでは決してあり得ない一人の女が、猶且つ卓抜なローザをその歴史性によって理解し得るということはどこからその力が生じているのであろうか。私は、そこに、階級の発展が平凡な大衆の一人一人を、いつしか前・・・ 宮本百合子 「生活の道より」
・・・という卓抜な文学作品となって現れた。そしてソヴェト社会建設の各分野に働く生ける何万人かのアヴデンコとして。 国内戦時代のたたかいの結果、失明し全身不随となった若いオストロフスキーが、同志と家族にたすけられつつ、その生涯の終りに「鋼鉄はい・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・同志小林が卓抜なボルシェヴィク作家である上に、優秀な理論家、指導者としての最近の発展は主として日和見主義との闘争に関する諸論文の中にうかがわれたのである。このたびの決議のレーニン的基礎づけ、思想的基礎づけの半ばは、同志小林が全力を傾けて実践・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ 師匠のいらない文学と音楽とはちがうから、卓抜な先生を良人としているカルメン夫人は一面最もよい環境にいるわけである。ところが、この条件が却って夫人の持ちものを未熟なままにふっきらせ切らない。完成した形が外から筺をはめているのである。夫人・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・彼女の芸術は、東洋をうつす卓抜な鏡の一つであった。 近代日本の権力が、中国に対してはいつも侵略者であったという悲しむべき事実から、同じ東洋のわたしたちも、パール・バックの鏡によって、真実の中国への愛をよびさまされたのであった。「春桃・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・もしかすると、短篇が更にそこに横溢している生活感情や色彩熱量などの点で卓抜であるというひともいないではないでしょう。例えば「二十六人と一人」「チェルカッシュ」などを愛読したひとは。 ゴーリキイが、あらゆる点で豊富なテムペラメントを持って・・・ 宮本百合子 「長篇作家としてのマクシム・ゴーリキイ」
・・・ トルストイが、社会の矛盾の根源を人間の本能に帰して、当時のロシアの解放運動とそこに生き死んだ卓抜な男女の生活に冷淡であり、ツルゲーネフが、却って彼の受動性、感受性によってそれらの新しい社会的現象に注意を喚びさまされながら、しかもそ・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
出典:青空文庫