・・・福見や河野が洋行する話や、桜井が内務省の参事官で幅を利かせているような話が出ると竹村君は気の乗らぬ返辞をしてふっと話題を転ずるのであった。 今日も夕刻から神楽坂へ廻って、紙屋の店で暮の街の往来を眺めていた。店の出入りは忙しそうであったが・・・ 寺田寅彦 「まじょりか皿」
・・・川島忠之助は正金銀行の支配人として活躍したし、東海散士、柴四朗は農商務次官、代議士、大阪毎日新聞初代社長、外務参事官、閔妃事件で下獄したこともある。馬場辰猪は、明治四年頃ロンドンで法律を学び、自由党解散の前年「天賦人権論」を著し、獄中生活の・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
渡辺参事官は歌舞伎座の前で電車を降りた。 雨あがりの道の、ところどころに残っている水たまりを避けて、木挽町の河岸を、逓信省の方へ行きながら、たしかこの辺の曲がり角に看板のあるのを見たはずだがと思いながら行く。 人通・・・ 森鴎外 「普請中」
出典:青空文庫