・・・しかし俳句が短歌とちがうと思われる点は、上にも述べたように花鳥風月と合体した作者自身をもう一段高い地位に立った第二の自分が客観し認識しているようなところがある。「山路来て何やらゆかしすみれ草」でも、すみれと人とが互いにゆかしがっているのを傍・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・それでラジオで耳馴れた人の声を聞くと、その声が直ちにその人の顔の視像を呼出して来て合体する。そこで始めてその言葉の意味が明らかになるのであろうと思われる。日常接している人だと、いちばん最初に咽喉を掃除するための「エー」という発声を聞いただけ・・・ 寺田寅彦 「ラジオ雑感」
・・・名にして毫も譲るところなかりしも、畢竟瘠我慢の然らしむるところにして、また事柄は異なれども、天下の政権武門に帰し、帝室は有れども無きがごとくなりしこと何百年、この時に当りて臨時の処分を謀りたらば、公武合体等種々の便利法もありしならんといえど・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・「あんなに合体していたこの二人は、もう同じ部屋に一緒に居ることは出来なかったのです。」末娘エレナーは書いている。彼女と年取ったレンシェンとがカールの命を救った。二人は昼夜ぶっ通しの看病をした。不思議に命をとりとめた「モール」が、病むイエニー・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・と尻尾に二つ頭をもった蛇では、どっちへ動くこともできない。腐るだけである。そこで、今度の左翼十一名の脱退となった。 一九二七年の末、労農芸術連盟から「前衛」が分裂し、のち「プロレタリア芸術」と合体して全日本無産者芸術連盟を結成した。・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫