・・・が、権威的の学術書なら別段不思議はないが、或る時俗謡か何かの咄が出た時、書庫から『魯文珍報』や『親釜集』の合本を出して見せた。『魯文珍報』は黎明期の雑誌文学中、較や特色があるからマダシモだが、『親釜集』が保存されてるに到っては驚いてしまった・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・などの合本になった、水泡集と云ったと思うエビ茶色のローズの厚い本。『太陽』の増刊号。これらの雑誌や本は、はじめさし絵から、子供であったわたしの生活に入って来ている。くりかえし、くりかえしさし絵を見て、これ何の絵? というようなことを母にきい・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・ 合本になっている順で、新葉集の歌もちょいちょい目にふれたが、私はすきになれそうな気がしなかった。憤り恨みが表に立ちすぎている――技巧の上の問題などではない。あれ等の歌も遺した人々の心の全部を其のような激情が占領していて、花を見ても月を・・・ 宮本百合子 「新緑」
・・・ 女学校の二年ぐらいから、玄関わきの小部屋を自分の部屋にして、こわれかかったような本棚をさがし出して来て並べ、その本棚には『当世書生気質』ののっている赤い表紙の厚い何かの合本や『水沫集』も長四畳のごたごたの中からもって来ておいた。 ・・・ 宮本百合子 「祖父の書斎」
この間うちから引越しさわぎで、あっちの古本の山、こっちの古本のかたまりといじりまわしているうちに、一冊、黒い背布に模造紙の表紙をつけた『女学雑誌』の合本が出て来た。かたい表紙をあけてみると、教育という見出しで遺伝についての・・・ 宮本百合子 「本棚」
出典:青空文庫