・・・ と語音の調子もある……口から吹飛ばすように、ぶっきらぼうに古女房が答えた。「ああ、かっぱ。」「ほほほ。」 かっぱとかっぱが顱合せをしたから、若い女は、うすよごれたが姉さんかぶり、茶摘、桑摘む絵の風情の、手拭の口に笑をこぼし・・・ 泉鏡花 「小春の狐」
・・・ひところはやった玄米パン売りの、メガフォーンを通して妙にぼやけた、聞くだけで咽喉の詰まるような、食欲を吹き飛ばすようなあのバナールな呼び声も、これは幸いにさっぱり聞かなくなってしまった。 つい二三年前までは毎年初夏になるとあの感傷的な苗・・・ 寺田寅彦 「物売りの声」
・・・といって徒らに吹き飛ばすわけでは無かった。当人は事実をいっているので、事実えらいと思っていたのだ。教員などは滅茶苦茶であった。同級生なども滅茶苦茶であった。 非常に好き嫌いのあった人で、滅多に人と交際などはしなかった。僕だけどういうもの・・・ 夏目漱石 「正岡子規」
出典:青空文庫