・・・ ところが、日々に進み拓けてゆく社会生活の全事情とそれにつれて、より周密に探求されてゆく文学理論の進歩につれて、日本以外の国では、これまで機械的な傾きで哲学と文学とが結びあわされていた創作方法の課題も飛躍的に発展した。創作方法における社・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 日本が世界歴史のこの多岐な頁をしのいでゆく永年に亙っての実力のために、日本人はこれまでの誇りとして自認している勇気を更に多様な沈着な粘りつよく周密なものとしての面に発揮してゆかなければならないでしょうし、社会事情の複雑さについて却って・・・ 宮本百合子 「歳々是好年」
・・・よいプロレタリア文芸の働き手はいつも必ず闘争においてひるむことを知らぬ卓抜周密な同志である。〔一九三三年六月〕 宮本百合子 「小説の読みどころ」
・・・を発表し、貝原益軒流の女庭訓でしばられた日本の女の社会的な向上のために周密真摯な努力と具体策を示しているのである。 自身女性である中島湘煙が、なぜ女はみな魔がさしているような非条理におかれているかというその原因にまでふれ、沈潜して理解し・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・我々の世代が、文化を十分に享受しようと欲している熱意と、明日の文化をより豊にしようと希ってつとめている努力とは周密に観察され支持されねばならぬと信じる。〔一九四〇年十二月〕 宮本百合子 「世代の価値」
このたび、常任中央委員会によって発表された日和見主義との闘争に関する決議は、プロレタリア文学運動が今日到達したレーニン的立場に立っての分析の周密さ、きわめて率直な自己批判の態度などにおいて、非常にすぐれたものである。この決・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ ところで、ここに私たちの注意をひき且つ周密な自省を求めている一つのことがある。それは、文化面をもひきくるめてのこういう誤った全体主義の見かたが、どうして今日大衆の進歩的な部分、知識人の進歩的な部分によって、それが当然受けるべきだけ・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・ 日本がその現実の歴史に即して周密に探求されることを望むことでは、私も決して人後におちない誠意をもつものの一人である。林房雄氏は談として「会則も綱領もない」ことで会の本質の自由を強調し、文芸懇話会の延長と見られては困る、何物の援助も受け・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・藤村は、生れつき周密、計画的である。詩から小説への過程を、画家における素描の勉強に等しい散文でのスケッチで鍛錬したことは、修業の方法の最も適当な道であったろう。明治のロマンティック時代の詩人の多くは後年の荒々しい自然主義の時代に散文家として・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
・・・を語っているのであるけれども、日本というものが益々世界的規模で考えられるようになり、日本文学というものが従って拡大された世界文学の動きの中で考えられる時代に来つつあるとすれば、作家の生活感情の具体的な周密沈着な現実への沈潜と、その沈潜におい・・・ 宮本百合子 「遠い願い」
出典:青空文庫