・・・ 四つ角の学校の、道具を売っているおばさんの所まで来ると帽子のやつ、そこに立ち止まって、独楽のように三、四遍横まわりをしたかと思うと、調子をつけるつもりかちょっと飛び上がって、地面に落ちるや否や学校の方を向いて驚くほど早く走りはじめまし・・・ 有島武郎 「僕の帽子のお話」
・・・それでいちばん上の、この男の子は、こうして毎日、町の四つ角にそびえている私の下に立って、通る人々に夕刊を売っているのであります。 ある日のこと、どういうものか新聞がいつものように売れなかったのです。けれど、売らなければならなかった。それ・・・ 小川未明 「煙突と柳」
・・・もし吾々人間にこの半分の能力があれば、銀座の四つ角で自動車電車の行き違う間を、巡査やシグナルの助けを借りずとも自由自在に通過することが出来るにちがいない。しかし人間にはシグナルがあり法律があり道徳があるために鳥獣の敏活さがなくても安心して生・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・もしわれわれ人間にこの半分の能力があれば、銀座の四つ角で自動車電車の行き違う間を、巡査やシグナルの助けを借りずとも自由自在に通過することができるにちがいない。しかし人間にはシグナルがあり法律があり道徳があるために鳥獣の敏活さがなくても安心し・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・ この乗り物が町の四つ角に来たとき、そのうしろから松葉杖を突いた立派な風采の青年がやって来て追い越そうとした。袴をはいているが見たところ左の足が無いらしい。それを呼び止めて三輪車上の紳士が何か聞いている。隻脚の青年は何か一言きわめてそっ・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・三田行きの電車を大手町で乗り換えたり、あるいはそこから歩いたりして日本橋の四つ角まで行く。白木屋に絵の展覧会でもあるとはいって見る事もあるが、大概はすぐに丸善へ行く。別にどういう本を買うあてがあるわけではないが、ただ何かしら久しぶりで仲のい・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
地震前、カフェイ・ライオンの向う側に、山崎の大飾窓が陰気に鏡面を閃かせていた頃のことだ。 私はよく独りで銀座を散歩した。 尾張町の四つ角で電車を降り、大抵の時交番の側を竹川町の停留場まで行き、そこから反対側に車道を・・・ 宮本百合子 「粗末な花束」
出典:青空文庫