『文学』の編輯者から『徒然草』についての「鑑賞と批評」に関して何か述べよという試問を受けた。自分の国文学の素養はようやく中学卒業程度である。何か述べるとすれば中学校でこの本を教わった時の想い出話か、それを今日読み返してみ・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・アカデミックな国文学者の著になる和泉式部の研究を土台として、一躍情熱の女詩人与謝野晶子への讚美となることの腑に落ちなさは一般文化人の胸にありつつ、何故輿論としてそれが発言されないのであろうか。文学に即して見れば、従来の国文学研究が実社会から・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・は明治以来昭和十五年までの日本文学が観察されていて、文献がこまかくあげられているとともに、国文学というものがいかなる方法で研究されるべきかという点について新しい考察もふくめられている。 大体、文化史というものは、何となし私たちに親密に感・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・この報告では新しい方向に研究を展開しはじめている国文学、短歌、俳句、戯曲、児童文学等についてふれることができませんでした。この報告の不十分な点ですから、それを諒解してよんでいただきたいと思います。〔一九四七年五・六月〕・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・会員の顔ぶれとして、林房雄、浅野晃、北原白秋、保田与重郎、中河与一、倉田百三等、この一、二年来の新日本主義的提唱とともに既に顕著な傾向性を示すと共に一般からおのずからなる定評を与えられている諸氏以外に国文学その他の分野では一応は誰しも社会的・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・参考にと思って国文学史と関根先生の「小説史稿」と雑誌に出て居た江戸文学と江戸史跡をよむ。いるところへはり紙をして別に分けておいた。筆を新らしいのをおろしたら妙にピョンピョンして書けないからかんしゃくをおこして鋏でチョキンとしてしまった。かえ・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・昔から国文学者は「源氏物語」の立派さをいろいろな角度から研究して、ちょうどヨーロッパでシェークスピア字引があるように、「源氏物語」の中に使われている言葉について、家の造作について、着物の色合について、一つの字引のようなものさえできているよう・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・ 二 国文学のもつ地の利 日本文学の古典が、今日の文学の現実的な進みを助ける力としてよりも、寧ろそれを制しとどめるような力として持ち出されて来ていることについて、一部の社会情勢がしからしめていることは勿論云うま・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
国文学というものは、云わばこれから本当の生きた研究がされるのではないだろうか。旧来の国文学は専門家の間にどこまでも鑑賞、故実穿鑿の態度で持ち来されていて、推移する文化の科学的な足どりとは自身の研究の方法を一致させていなかっ・・・ 宮本百合子 「若い世代のための日本古典研究」
・・・わたくしは友人の岡本の言葉に刺激されて、藤岡作太郎著『国文学史講話』の序文を読んだ。そうして非常に動かされた。しかしそのなかに「とにかく余は今度我が子のあえなき死ということによりて、多大の教訓を得た。名利を思うて煩悶絶え間なき心の上に、一杓・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫