・・・ 皇族の方々のおんうち、東京でおやしきがお焼けになった方もおありになりましたが、でも幸にいずれもおけがもなくておすみになりましたが、鎌倉では山階宮妃佐紀子女王殿下が御圧死になり、閑院宮寛子女王殿下が小田原の御用邸の倒かいで、東久邇宮師正・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・また、大きな岩と見えるものが墜落して来て、その下敷きになって一人の人間が隠れればその人はほんとうに圧死したものと考えられるのである。それは影に質量がなく従って運動量のないことを忘れているからである。 次に「空間」はどうなっているか。これ・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・しかし今度襲われる地方がどの地方でそれが何月何日ごろに当たるであろうということを的確に予知することは今の地震学では到底不可能であるので、そのおかげで台湾島民は烈震が来れば必ずつぶれて、つぶれれば圧死する確率のきわめて大きいような泥土の家に安・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ 由紀子の背中の赤子は、何故圧死しなければならなかったか。ただ一つの「何故」ではあるが、この一語こそ、戦争犯罪的権力に向って、七千万人民が発する詰問としての性質をもっているのである。この「何故」は止めるに止めかねる歴史の勢をはらんで、権・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・鎌倉から小南の兄かえり、叔母上、季夫圧死し、仮埋葬にした由 七日 午後A来。荷物半分負うて行く。 八日 自分基ちゃん、歩いて青山に行く。 歩いて林町より三時間かかり青山に来る。やけ野原の有様、心を**にす。五番町・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・落盤はいつ起って君らを圧死さすかもしれぬ。 ソヴェト同盟の炭坑では労働者がどんなに作業の危険を防ごうと互に注意しあっているかがありありと感じられた。このポスターを見ただけでも、会社が搾るために労働者をシキに追い込む炭坑と、労働者が自分ら・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・私は、鎌倉で、親密な叔母と一人の従弟が圧死したことを知った。まさかと思った帝国大学の図書館が消防の間も合わず焼け落ちてしまったのを知った。 段々彼方此方の焼跡を通り、私は、何とも云えない寥しい思いをした。自分の見なれた神田、京橋、日本橋・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
出典:青空文庫