・・・に関する詳しい記事のありそうな本を捜していた時に、某書店の店員が親切にカタログをあさってともかくも役に立ちそうな五六種の書名を見つけてくれて、「海外注文」を出してもらったが、一年以上たってもただ一冊手に入っただけで、残りのものは梨のつぶてで・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・過去の仕事のカタログを製したりするよりは、むしろ未来の仕事の種子の整理に骨折っているらしいのが、常に進取的なこの人の面目をよく表わしていて面白いと思う。 このようにしてこそ、彼のような学者は本当の仕事というものが出来るのではあるまいか。・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・そこで某殺人事件の種取りを命ぜられた記者は現場に駆けつけて取りあえずその材料を大急ぎでかき集めた上で大急ぎでそれを頭の中のカタログ箱の前に排列してそうしてさし当たっていちばんよいはまりそうな類型のどれかにその材料をはめ込んでしまう。そうする・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・ 物理のような基礎科学の教科書が根本の物理そのものはろくに教えないで瑣末な枝葉の物理器械や工学機械のカタログを暗記させるようなものでは困ると思う。レビュー式でも本当に面白いレビューならまだしも、さっぱり面白くない百景を並べたのでは全く生・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・シュミット・ボンの『老婆』というのをともかくお送りしますから、そのうしろのカタログ中から選んでいただいたら、手に入るものもあろうと思います。『現代ドイツ短篇集』は幸いありました。こちらへとって置きましょう。南山堂も郁文堂もモクロクは出してい・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・自分ではそれが出来ず、仏蘭西展などがあったとき、私を呼んで二人でカタログなどをひろげ、買うならこれが欲しいなどと話し、実際にそれを買うということは出来ませんようでした。 陶器の趣味についても同様でした。やっぱり逸物を手に入れるには金がい・・・ 宮本百合子 「写真に添えて」
・・・ この他幾つかの印象に残っている絵があり、一見平凡のようだったそれらの絵の作者のこの次の作品が楽しみのような気がします。カタログに記録をつけなかったので、はっきり画題までは言えませんが、「都民」という絵には光線がバラバラで画面のまとまり・・・ 宮本百合子 「第一回日本アンデパンダン展批評」
・・・ のカタログを翌日送って上げた。 その他公開の席でちょいちょい会うきりで、その俥に乗って田端の坂を登って行った時以上私の友としての心持は進みませんでした。 七月二十四日に私は母を連れて福島県の田舎へ出立した。二十六日の昼頃、私の・・・ 宮本百合子 「田端の坂」
・・・三階の書籍かり出しのところとカタログ室とは、もとからここにこうしてあっただろうか、いかにも埃っぽくて奥が深く暗い書庫に向って、裁判所めいた高い卓があるところは、見馴れたここの光景だが、カタログ室の方が妙にガランとしている。書籍かり出しに、相・・・ 宮本百合子 「図書館」
・・・――今朝ね、カタログが来たので、早くそれを見たいと思いながら、餌が無さそうなので吹いてやったりしたもんだから」「はずみね。それにこの籠の戸が少し普通より堅いから、ぱたんと落ちなかったのよ」「一日こうやってもいられないわね……二階に上・・・ 宮本百合子 「春」
出典:青空文庫