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・・・従来酒は嫌な上に女の情というものを味う機会がなかったので彼は唯働くより外に道楽のない壮夫であった。其勤勉に報うる幸運が彼を導いて今の家に送った。彼は養子に望まれたのである。其家は代々の稼ぎ手で家も屋敷も自分のもので田畑も自分で作るだけはあっ・・・
長塚節
「太十と其犬」
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・・・ エレーンは父の後ろに小さき身を隠して、このアストラットに、如何なる風の誘いてか、かく凛々しき壮夫を吹き寄せたると、折々は鶴と瘠せたる老人の肩をすかして、恥かしの睫の下よりランスロットを見る。菜の花、豆の花ならば戯るる術もあろう。偃蹇と・・・
夏目漱石
「薤露行」