・・・トルーマン大統領の再選は世界各国の一部の人々には大番くるわせであったらしい。各新聞は、最大の形容のことばをつかって、その番くるわせについて書きたてた。けれどもそれらの記事は、おちついて読むわたしたちに滑稽な、またいくらか腹だたしい感じをあた・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・爺いさんは元大番石川阿波守総恒組美濃部伊織と云って、宮重久右衛門の実兄である。婆あさんは伊織の妻るんと云って、外桜田の黒田家の奥に仕えて表使格になっていた女中である。るんが褒美を貰った時、夫伊織は七十二歳、るん自身は七十一歳であった。・・・ 森鴎外 「じいさんばあさん」
・・・ついで外桜田の藩邸の方でも、仲平に大番所番頭という役を命じた。そのつぎの年に、仲平は一旦帰国して、まもなく江戸へ移住することになった。今度はいずれ江戸に居所がきまったら、お佐代さんをも呼び迎えるという約束をした。藩の役をやめて、塾を開いて人・・・ 森鴎外 「安井夫人」
出典:青空文庫