・・・これから結婚しようとしている人、もうじき結婚をするような運びになっていた人、或いはもう婚約がある人々、そういう人たちが、急な境遇の変化で、対手の男を前線へ送らなければならないような事情がどっさりおこった。 既に結婚していれば、それがたと・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・ 長尾半兵衛の息、ケイオーに七八年居、いつ卒業するかあてのない男と婚約。――自分が引まわせる気のよい男という条件で。長尾の地所が二十万円でうれたら結婚する。それまで娘早稲田に聴講生として通う。 ○○された少年 美・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・それというのも、さっき一緒に来た娘さんが出征させられている婚約の人をもう六、七年まちつづけているから一層若い人々の今日の境遇を思いやってのことだという話だった。いわばあてのない人をそうして幾年も待っていても、と周囲がとやかく云いだして来てい・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
・・・それによって、幾年かの婚約を先ず予備するもの、或は、双方の重要な条件が相容れないためもう最後の一歩と云う点で失望に終るもの等、一方、軽々しく、まるで小荷物の郵送でもするような結婚があると思えば、他方には、苦しい、深刻な場面が展開されているの・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ ○徳山が南との婚約を破ったとの話、それにも Miss が関係して居るとのこと。Miss Caulfield についての考、徹夜、 ○ライブラリーで暫く会わないという手紙を書いて絶交する。 ○イースター後、春、殆ど初夏の五月 鶴・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(一)」
・・・ 僅か十四五の時、両親には前後して死去され、漸々結婚が未来の希望を輝せ始めると、思いもかけず長年の婚約者との間に、家族的な障碍が横えられました。 両親の死後、彼女の新たな保護者となった長兄は生憎、許婚者の父とは政敵の関係にあって、そ・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・「あの人たちみたいなのも余りないわね、二年も婚約していて、おまけにあんな喧嘩をする。それでもやっぱり離れ切りもしないでこう円満に納まるんだから」「喧嘩して却ってよくなったのかもしれない」「そんなことよ。喧嘩せざる藍子、喧嘩せる黒・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・アンネットは婚約の青年をもっていたのであるが、彼女は従来の仕来りどおりの結婚生活の中で二つの人間的な要素、個性的な特色が互に減殺しあうこと、愛情が見せかけの仕草や慣習の一つに堕すことなどを嫌って、通常の結婚生活に入ることを拒む。けれども、ア・・・ 宮本百合子 「未開の花」
・・・恋愛や結婚についても、それに準じて、親の利害に反対しない範囲で、ひとに選んで貰った対手と、婚約時代には交際もするという程度のところが穏当とされたのであった。 藤村や晶子が盛にロマンティックな詩で愛の美しさ、愛し合う男女の結合の美しさ、価・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・若い彼女達にふさわしい青年達は、工場からも、会社からも、学校からも総て引抜かれて戦場へ送られつつある。婚約をしたり、或は結婚したばかりの人達でさえ、自分達の初々しい家庭生活を保つことは出来なかった。千人針を持って、電車の中や駅の前や勤務先な・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫