・・・女学校を出て専門学校へ進もうという方々は、いわばまだ少女らしさの多い心の一方で、どんなに現実的に、学資のことを考えたでしょう。日本の中産階級は戦争によって、最も生活の安定を失いました。日本の女子教育はおくれているから、専門学校程度の勉強をす・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・を「大抵は学資の一部にあてている」のだそうである。校長先生の息子さんの経営で軍需インフレで繁栄している工場へ働いて、貰ったいくばくかの金を再び学校で、その阿母さんに払うのだとしたら、それらの可憐な女学生女工の二時間の労働というものの実質は、・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ 青年時代のカールは、生活の自然なよろこびを心おきなく楽しみ、人づきあいも広く、勉強ずきだが、学資はいつの間にやらたりなくなっているという風なところがあったらしい。大学生同士の借金で相当困ったこともあったらしい。父マルクスは、こういう時・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・百五十円では、外食するとしたら、学資が出ませんでしょう。学生の生活というものは、働いている人々の生活と、かけ離れたものであると、いままではおもわれておりましたが、いまでは、働いている人の生活問題と、学生の生活問題とは、がっちり結びついていま・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・モラトリアムによる学資の制限と住居、食糧、教育資材の欠乏は、小学生から大学生までをひっくるめた困難においている。各専門学校、大学などで学内自治の運動が起っているのは当然である。学生達は自分達の中から委員を選んで食糧の困難、宿舎の問題、資材難・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・私立学校によくある通り、金持の娘達がまるで威張るのでロザリーのように学資の豊かでない、伯母のかかりうどの娘は、いろいろなことで、揶揄されたり、なぶり者にされたりしました。が、ロザリーは楽しく勉強をし、追々、人生に対して、はっきりした要求を持・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・大学の本科生となる。学資欠乏し、郷里の大塚氏より十ヵ月間恩借。 一九一五年。大学卒業。井上正夫を浅草に出演せしむる橋渡しをする。同一座の作者となったが、二月目に意見の衝突をして飛び出し、その暮、秋月、川上、喜多村一座の作者となり、舞台監・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・この家を人に貸して、暮しを立てて倅の学資を出さねばならないということである。 それから裏側の方の間取を見た。こちらは西の詰が小さい間になっている。その次が稍や広い。この二間が表側の床の間のある座敷の裏になっている。表側の次の間と玄関との・・・ 森鴎外 「鶏」
出典:青空文庫