・・・ 役人や会社銀行員があるただ一人の長上から無能と宣言されただけで首をきられる。するとその下の地位にいる同僚達は順繰りに昇進してみんな余沢に霑うというような事があるとすると、それはいくらかはこのドラゴイアンの話に似ている。 ・・・ 寺田寅彦 「マルコポロから」
・・・例えば私なら私が世の中の仕来りに反したことを、断言し、宣言し、そうしてそれを実行する。その時に、もしそれが根柢のない事を遣っているならば、如何に私自身にはそれが必然の結果であり、私自身には必要であろうとも、人間として他の人のためにならない。・・・ 夏目漱石 「模倣と独立」
・・・依て窃に案ずるに、本文の初に子なき女は去ると先ず宣言して、文の末に至り、妾に子あれば去るに及ばずと前後照応して、男子に蓄妾の余地を与え、暗々裡に妻をして自身の地位を固くせんが為め、蓄妾の悪事たるを口に言わずして却て之を夫に勧めしむるの深意な・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・是れ、げにも尊き祭始の宣言である。然しながら、未だ祭司長の云わざる処もある。これ実に祭司長が述べんと欲するものの中の糟粕である。これをしも、祭司次長が諸君に告げんと欲して、敢て咎めらるべきでない。諸君、吾人は内外多数の迫害に耐えて、今日迄ビ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・けれどもポツダム宣言を受諾した二年目の私たちの生活での実際で、こういう制度の上の平等がどこまで実現されているかということはなかなかの問題だと思う。改正憲法のお祭りは五月三日に日比谷で大仕掛に行われた。けれども、あの日台所で燻い竈の前にかがみ・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・なぜならば、機会ある毎にアジア民族の解放を妨げることしかしてこなかった日本の帝国主義は、こんにちでも決してその根拠と、協力する勢力を失っておらず、現在ではますます日本の民主化とポツダム宣言による平和の確保がおびやかされてきているからです。こ・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・そのことは、同じ小説の中の文句でもはっきり宣言せられているのであるが、今私たちがこの小説を読むと、何か一口にいい表わせぬ深い感慨に打たれざるを得ないのである。 この小説の書かれた時代でさえも、まだ個人の感情や個人生活の利害が、階級の感情・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ ポツダム宣言を受諾した表面上、日本の民主化は、政府が世界に向って義務づけられた仕事です。けれども、みなさまは、どうお思いになりますか? 日本の権力者はしんから民主的になろうと努力しておりますか。武装解除した日本として、最後の正義として・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
一 今日のファシズムのありかた この八月十五日には、四回目のポツダム宣言受諾の記念日がめぐってくるわけです。その記念日にあたって、わたしたちが力をつくして闘い、抵抗しなければならないのが国の内外にあら・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・という喧しい宣言のあとで、神を求むる心は忍びやかに人々の胸に育って行く。 キリストの復活を認容することのできなかった物質論は今や人類の常識である。神が七日にして世界を創造したという物語のごときは「物語」以上に何の権威をも持たない。処女懐・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
出典:青空文庫