・・・今日の文人は最早社会の寄生虫では無い、食客では無い、幇間では無い。文人は文人として堂々社会に対する事が出来る。 今日の若い新らしい作家の中には二十五六年前には未だ生れない人もある。其大部分は幼稚園若くは尋常一二年の童児であったろう。此の・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・今はそんな人もないであろうが、しかしよく考えてみると、こうした気分は実を言うとあらゆる芸術批評家の腹の底のどこかにややもすると巣をくいたがる寄生虫のようなものである。そうして、どういうわけか、これは特に映画批評人という人たちのとかくするとか・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・ 長年猫を飼っているが、こんな寄生虫を見るのははじめてのことである。 自分の頭から背中から足の爪先までが急にかゆくなるように感じた。 この猫が書斎の前の縁側にすわってかゆがって身もだえをしていられると、どうにも仕事が手につかない・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・魂を激しい愛――愛と云うものを理解した愛――でインスパイアしてくれるどころか、只怠いくつな寄生虫となって、無表情の顔を永遠の墓場まで並べて行かなければならない――。 其は、女性である私が考えてもぞっとする事でございます。人間として、悲し・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 彼等はもう、実際人として尊敬するには塵ほどの価値もないような女が、只、風俗を利用し、婦人を冷遇する男子は、紳士として扱われないと云う異性の弱点につけ込んで、放縦な、贅沢な寄生虫となっている厭わしさを見抜いています。 又、腹の中では・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫