・・・この古い琴の音色には幾度か人の胸に密やかな漣が起った事であろう。この道具のどれかが己をそういう目に遇わせてくれたなら、どんなにか有難く思ったろうに。この木彫や金彫の様々な図は、瓶もあれば天使もある。羊の足の神、羽根のある獣、不思議な鳥、また・・・ 著:ホーフマンスタールフーゴー・フォン 訳:森鴎外 「痴人と死と」
・・・その形小さく力無い鳥の家に参るというのじゃが、参るというてもただ訪ねて参るでもなければ、遊びに参るでもないじゃ、内に深く残忍の想を潜め、外又恐るべく悲しむべき夜叉相を浮べ、密やかに忍んで参ると斯う云うことじゃ。このご説法のころは、われらの心・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
出典:青空文庫