・・・その親がどのように自分たちの世代を熱心に善意をもって生きて、その子らのためにどんなより美しい、よりすこやかな社会の可能をひらいてやろうとして精励したか、我が家一つの狭い利己的な封鎖的な安泰の希願からどんなに広い、社会や、世界の生活への理解と・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・婦人の政治参加の問題どころか、戦争に熱中した政府は戦争に対する人民の批判や疑問を封鎖するために、近衛首相を主唱者として、政党を解消させ、翼賛政治会というものにして、議会そのものの機能を奪った。婦人運動の各名流たちは、「精神総動員」に参加して・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・ときめて、金を銀行、郵便局へ封鎖し、生きるために欠くことの出来ない生活必需費を、グイ、グイとつり上げている。私たちが、自分たちの頸のまわりで繩が段々締って行くように感じるのが、間違っているだろうか。 封鎖された金は、人民生活の改善のため・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・そして、あとはみんな封鎖されてしまったわけですが、しかし、おじいさん、おばあさんの二人がいらっしゃる家庭では、この二人はなんで生きて行くのでしょう。おじいさんたちの生活資金はありませんからね、などという人がありますでしょうか、しかし、この五・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・日配の解体、再編成は、集中排除法という経済面から強行されて、三ヵ月以上にわたった出版界の経済封鎖の過程では、大出版企業者をのぞく、すべての出版事業がいちじるしい危機にさらされた。こんにち揺がない大出版企業の代表者たちが、文化上どのような性質・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・市民税を納めることに、勤労市民の一人としての誇りを感じようとする心は、上級学校への道の封鎖や戸主であるなしの問題、その他の現実を思いめぐらしたとき、前途に洋々たる展望を描き出すことの困難さに当惑するであろうと思われる。青年に期待するというの・・・ 宮本百合子 「今日の耳目」
・・・研究の分野を切りはなしてしまったのみならず、専門家間に実証主義という名で呼ばれているそうであるところの一部の研究家を、その準備的研究の上に固着せしめ、枕草子の専門家或は大鏡の専門家という、瑣末な活動に封鎖する結果をひき起した。 整理され・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
封鎖で原稿料を払うということは、これから作品をかいてゆく人のために、ますます条件がわるい、新しい作家、新しい日本の文学は生れにくい、ということである。今日、出版は、大部分が営利に立っている。営利の目やすから、荷風のところへ・・・ 宮本百合子 「作家への新風」
・・・ 降って十八世紀の西欧に於ける人文主義も封建の封鎖に対して人間性の明智と合理とを主張した広義のヒューマニズムの動きであった。引続く世紀に例えばトルストイによって表現されているヒューマニズムは、日本の『白樺』の精神にも流れ入って来た。言っ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 封鎖されていた日本の窓は、東に向っても西に向っても、漸々開かれた。私たちは開かれた窓に向っている。そして、その窓に、もたらされてくるこれらのソヴェトの文学の収穫を待っている。私たちはその窓枠を飛び越えて、自分たちの生活の声をあげながら・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
出典:青空文庫