・・・十年もまえから、あの店の専属のようになって、異色ある蔓バラ模様のレッテル、ポスタア、新聞広告など、ほとんどおひとりで、お画きになっていたのだそうで、いまでは、あの蔓バラ模様は、外国の人さえ覚えていて、あの店の名前を知らなくても、蔓バラを典雅・・・ 太宰治 「皮膚と心」
・・・むかしの帝劇専属の女優なんかがいいのだよ。」「ちがうね。女優は、けちな名前を惜しがっているから、いやだ。」「茶化しちゃいけない。まじめな話なんだよ。」「そうさ。僕も遊戯だとは思っていない。愛することは、いのちがけだよ。甘いとは思・・・ 太宰治 「雌に就いて」
・・・をよんで見ると、国を出る迄末息子としての藤村が、お牧という専属の下女にかしずかれ、情愛の深い太助爺を遊び対手とし、いかにも旧本陣の格にふさわしい育ち方をしている姿がまざまざと浮んで来る。それが急に言葉から食物まで違う東京、母も姉もお祖母さん・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
出典:青空文庫