・・・その第五中隊第一小隊に、僕は伍長として、大石軍曹と共に、属しておったんや。進行中に、大石軍曹は何とのうそわそわして、ただ、まえの方へ、まえの方へと浮き足になるんで、或時、上官から、大石、しッかりせい。貴様は今からそんなざまじゃア、大砲の音を・・・ 岩野泡鳴 「戦話」
・・・その家にもう一人小隊長と呼ばれている家族がいる。当年七歳の少年である。小隊長というのは彼等三人の中隊長であった人の遺児であるからそう名づけたのであろう。父中隊長の戦死後その少年が天涯孤独になったのを三人が引き取って共同で育てているのだ。・・・ 織田作之助 「電報」
・・・朝、登校の途中、一個小隊くらいの兵士とすれちがった時、思いがけなく大声で、「修ッちゃあ!」と呼ばれて仰天した。中畑さんが銃を担いで歩いているのである。帽子をあみだにかぶっていた。予備兵の演習召集か何かで訓練を受けていたのであろう。中畑さ・・・ 太宰治 「帰去来」
・・・私ひとり参加した為に、私の小隊は大いに迷惑した様子であった。それほど私は、ぶざまだった。けれども、実に不慮の事件が突発した。査閲がすんで、査閲官の老大佐殿から、今日の諸君の成績は、まずまず良好であった。という御講評の言葉をいただき、「最・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・その時お目にかかって、弔みを云って下さったのが、先ず連隊長、大隊長、中隊長、小隊長と、こう皆さんが夫々叮嚀な御挨拶をなすって下さる。それで×××の△△連隊から河までが十八町、そこから河向一里のあいだのお見送りが、隊の規則になっておるんでござ・・・ 徳田秋声 「躯」
・・・あいつはみんなで、一小隊はありましょう。みんな若いし擲弾兵です。」「ゆれて踊っているようですが構いませんか。」「なあに心配ありません。どうせチュウリップ酒の中の景色です。いくら跳ねてもいいじゃありませんか。」「そいつは全くそうで・・・ 宮沢賢治 「チュウリップの幻術」
出典:青空文庫