・・・今度の震災は何もかもひっくり返してしまったようなものです――昔からある店の屋台骨でも――旧い暖簾でも。上のものは下になるし、下のものは上になるし――もう今までのような店なぞを夢に見ているような時じゃありません」「上のものが下になって、下・・・ 島崎藤村 「食堂」
・・・下手な片手落ちの若返り法などを試みて造化に反抗するとどこかに思わぬ無理ができて、ぽきりと生命の屋台骨が折れるようなことがありはしないか。どうもそんな気がするのである。 十 うじの効用 虫の中でも人間に評判のよくないも・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・社会の屋台骨ごと揉まれている。著者が云っているとおり、「芸術一般という概念ぐらい私たちをつよく支配しているものはない」にかかわらず、急激な濤にうたれ、洗われ、文学の問題としてそもそも芸術一般というような概念に立つ判断が、現実を正しく把握し得・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
出典:青空文庫