・・・ 岩塩の縞の数から沈積期間の年代の推算をした人もあるが、これにも多くの疑問が残されるであろう。砂岩や凝灰岩の縞なども、やはりこれらと連関して徹底的に研究さるべき題目であろう。 岩石に関してはまだ皺襞や裂罅の週期性が重要な問題になるが・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・ 実際の地殻においてはその弱点の分布は必ずしも簡単ならず、しかもおのおのの弱点は相互に独立ならず、なんらかの関係を有すべく、特に一層事柄を複雑にするは、地殻岩石の弾性履歴効果の著しき事なり。これらがことごとく知られたりとするも、現象の性・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・の著者故日下部四郎太博士がまだ大学院学生で岩石の弾性を研究していたころのことである。一日氏の机上においてある紙片を見ると英語で座右の銘とでもいったような金言の類が数行書いてあった。その冒頭の一句が「少なく読み、多く考えよ」というのであった。・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・地理学書でもまた物語でも読んで知っていたアトリオ・デル・カヴルロとかソマムとか、こういう名前も何となく嬉しく、また地質学者から教わる色々の岩石の名前も珍しかったと見えてよく覚えている。紺碧のナポリの湾から山腹を逆様に撫で上げる風は小豆大の砂・・・ 寺田寅彦 「二つの正月」
・・・沢庵漬の重石程な岩石の破片が数町離れた農家の屋根を抜けて、囲炉裏へ飛び込んだ。 農民は駐在所へ苦情を持ち込んだ。駐在所は会社の事務所に注意した。会社員は組員へ注意した。組員は名義人に注意した。名義人は下請に文句を言った。 下請は世話・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・それから川岸を下って朝日橋を渡って砂利になった広い河原へ出てみんなで鉄鎚でいろいろな岩石の標本を集めた。河原からはもうかげろうがゆらゆら立って向うの水などは何だか風のように見えた。河原で分れて二時頃うちへ帰った。そして晩まで垣根を結って・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・ 二人は早く重い岩石の袋をおろしたさにあとはだまって県道を北へ下った。 道の左には地図にある通りの細い沖積地が青金の鉱山を通って来る川に沿って青くけむった稲を載せて北へ続いていた。山の上では薄明穹の頂が水色に光った。俄かに斉田が立ち・・・ 宮沢賢治 「泉ある家」
・・・土壌が浅くて少し根をのばすとすぐ岩石でしょう。下へ延びようとしても出来ないでしょう。横に広がるだけでしょう。ところが根と枝は相関現象で似たような形になるんです。枝も根のように横にひろがります。桜の木なんか植えるとき根を束ねるようにしてまっす・・・ 宮沢賢治 「台川」
・・・「諸君、手っ取り早く云うならば、岩頸というのは、地殻から一寸頸を出した太い岩石の棒である。その頸がすなわち一つの山である。ええ。一つの山である。ふん。どうしてそんな変なものができたというなら、そいつは蓋し簡単だ。ええ、ここに一つの火山が・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・空気や岩石や水を食べているのじゃないのです。牛や馬や羊は燕麦や牧草をたべる。その為に作った南瓜や蕪菁もたべる。ごらんなさい。人間が自分のたべる穀物や野菜の代りに家畜の喰べるものを作っているのです。牛一頭を養うには八エーカーの牧草地が要ります・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
出典:青空文庫