・・・外のものは兎に角と致して日本一お江戸の名物と唐天竺まで名の響いた錦絵まで御差止めに成るなぞは、折角天下太平のお祝いを申しに出て来た鳳凰の頸をしめて毛をむしり取るようなものじゃ御座いますまいか。」 という一文がありました。これは、「散柳窓・・・ 太宰治 「三月三十日」
・・・記事差止め。秘密裡に犯人を追跡しているのに違い無い。 こうしては、おられない。金のある限りは逃げて、そうして最後は自殺だ。 鶴は、つかまえられて、そうして肉親の者たち、会社の者たちに、怒られ悲しまれ、気味悪がられ、ののしられ、うらみ・・・ 太宰治 「犯人」
・・・「それにこの森はすっかりおれの森なんだからさっきのように勝手にわらびなんぞ取ることは疾うに差し止めてあるんだぞ。」 ネネムは大変いやな気がしました。紳士は又云いました。「お前もおれの仕事に手伝え。一日一ドルずつ手間をやるぜ。そう・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・このごろこの土地を人買いが立ち廻るというので、国守が旅人に宿を貸すことを差し止めた。人買いをつかまえることは、国守の手に合わぬと見える。気の毒なは旅人じゃ。そこでわしは旅人を救うてやろうと思い立った。さいわいわしが家は街道を離れているので、・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
出典:青空文庫