・・・自分が文学者として如何うだと云う批評や野心等は抜きにして、青年のような熾な愛、帰依で先人の文を追想し得た尊い心情の持ち主であると云う感服。 他の一方は。――彼も、ヴィクトリア時代の考証癖を脱し切れず、自分がこれはどう感じ見るかと思うより・・・ 宮本百合子 「無題(四)」
・・・独身でいるのさえ変なのに、お負に三宝に帰依していると来るから、溜まらない。」「また独身攻撃を遣り出すね。僕なんぞの考では、そう云う君だってやっぱり三宝に帰依しているよ。」「こう見えても、僕なんかは三宝とは何と何だか知らないのだ。」・・・ 森鴎外 「独身」
・・・彼らはおのずから頭を垂れ、おのずから合掌して、帰依したる者の空しい、しかし歓喜に充ちた心持ちで、その「偶像」を礼拝する。 それは確かに彼らにとって「偶像」であった。彼らの知る所は、ただそれが、無限の力と最高の権威とを有する仏の姿だという・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
出典:青空文庫