・・・仮令ば人間の一生は連続している、嬰児期幼児期少年少女期青年処女期壮年期老年期とまあ斯うでしょう、ところが実はこれは便宜上勝手に分類したので実は連続しているはっきりした堺はない、ですから、若し四十になる人が代議士に出るならば必ず生れたばかりの・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・第三の精霊 私のほんの心できいてもなにも大した事等は起らぬ、私がこの精女殿に――まっしろけな幼児の様な心をもったこの御人にたのんで云うてもらった事じゃ。第二の精霊 その様な事をたのむとはサテサテ――ほんとうに御主にはこの精女殿が美く・・・ 宮本百合子 「葦笛(一幕)」
・・・ 私は、久しぶりで、三つ四つの幼児を見るように楽しい、暖い、微笑ましい心持になって来た。子供の居ない家に欠けて居た旺盛な活動慾、清らかな悪戯、叱り乍ら笑わずに居られない無邪気な愛嬌が、いきなり拾われて来た一匹の仔犬によって、四辺一杯にふ・・・ 宮本百合子 「犬のはじまり」
・・・ 幼児の生活が、健康の点にも精神の上にも一生を通じて大切だということに着目されて来たのはよろこばしいことです。 ところが、中学生のものになると、今出ている少年向の雑誌の多くは、急に内容がおそまつになっています。どう編集していいかわか・・・ 宮本百合子 「親子いっしょに」
・・・多くの女達は冷たい幼児の手を取って自分の頬にすりつけながら声をあげて泣いて居る。啜り泣きの声と吐息の満ちた中に私は只化石した様に立って居る。「何か奇蹟が表われる事だろう。 残されて歎く両親のため同胞のために。 奇蹟も表わ・・・ 宮本百合子 「悲しめる心」
・・・がとりあげて語るところは、この一人の幼児の生命のためにサン・マリノの全住民がケティを救えと協力したばかりでなく、ラジオを通じてほとんど全米の注意がケティの安否に向けられた点だった。人の命を荒っぽく扱うにならされた日本のすべての人が、ひとの命・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・石橋湛山は、編輯者としてインフレーション問題を扱えば、まさか聖書の文句を引用して幼児の如くあらずんば天国に入るを得ず、とあるから国民よ、幼児のごとく政府を信頼せよ、とは書かなかったであろう。しかし大臣となって、いかな魔法のためか、その椅子は・・・ 宮本百合子 「豪華版」
・・・幼児のための設備拡大率 収容人員 一九二八年 一九三三年 増大率 幼稚園 一〇七 二一七 一〇二・二パーセント 子供の遊び場 二〇三 五〇五 一四九・三パーセント・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 勤労者によって構成されているソヴェト社会の実践上、この幼児保護教育の問題は重大な意味をもっている。 一九二七―二八 一九三二―三三 増率 幼稚園子供の竈 一〇七 二一七 一〇二・二パーセント 子供の・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・ 心に何もない幼児のように、ついと嘴を押して、ぴったり隣によりついた仲間の羽虫をとってやる。いい心持なのだろう。取られる方は、のびのびと眼をつぶり、頭の上にあおむけ、いつまでもいつまでもという風に喉の下などを任せている。仲間がもうやめに・・・ 宮本百合子 「小鳥」
出典:青空文庫