・・・それから、序文のなかで、ところどころに「自分の感想を加え、原文と異っているところもあるが」と云われていることも、目的は日本の読者にわかりやすいためという気持からとはいえ、やはり余り有益なことでもないと思う。作品の短い紹介ならともかく、一冊の・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・一田福次の出現の文学上の血脈は『はたらく一家』という短篇集に広津和郎氏の序文がつけられてある、それらのことと切りはなせないものだろう。 今日、作家のより社会的な成長が云われるとき、めいめいが自身のコムプレックスについて、謙遜にかつ熱く考・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・ジイドはその本の序文に「私自身よりも、ソヴェートよりもずっと重大なものがある。それはヒューマニティであり、その運命であり、その文化である」と云い又「あらゆる反ソヴェートの新聞紙が、いま自分の本を利用するのが残念である」と云いつつ、ロマン・ロ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・の点に対してどんな見解をもっているかという最下級の典型が、この本多式貯蓄法にあらわれている。 一部の科学者そのものの科学性の低さは、又別の形をもとっていると思う。ホグベンの「百万人の数学」の序文の中に、ナイル河の氾濫を予言することで支配・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・プレハーノフの有名な論文集『二十年間』の序文に基いて、芸術作品の批評にあたって第一にはその作品の中に如何なる方面の社会或は階級の意識が表現されているかを見るべきであるとして「文学的作品の観念を芸術の言葉から社会学の言葉に翻訳し、その文学的現・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・その本に序文を書いておられる有名な倉敷労働科学研究所の暉峻義等氏でさえ、著者がその点にふれていないことには言及しておられないのである。 成年の女に月経は自然の現象ではあるけれども、現代の労働の或る種のものは、その自然現象に阻害を与えるよ・・・ 宮本百合子 「職業婦人に生理休暇を!」
・・・そして長谷川如是閑氏や吉野作造氏の序文がついていることから、当時は全くわからなかったが、その井口という人が新人会初期の時代に青年期を生活した人であったことを理解し、当時の進歩的であった大学生の生活と今日の急進的学生の生活内容との間にある違い・・・ 宮本百合子 「生活の道より」
源氏物語を現代の口語に訳する必要がありましょうか。この問題を解決しようと試みることは、この本の序文として適当だろうかと思われます。 単に必要があるかと申しますのは、精しくいえば、時代がそれを要求するかということになりま・・・ 森鴎外 「『新訳源氏物語』初版の序」
・・・ 著者はこの書の序文において、「悠々たる観の世界」を持つことの喜びを語っている。この書はこのような心持ちに貫かれているのである。そうしてまさにその点にこの書の優れたる特色が見いだされると思う。 観照もまた一つの態度としては実践に属す・・・ 和辻哲郎 「『青丘雑記』を読む」
・・・わたくしは友人の岡本の言葉に刺激されて、藤岡作太郎著『国文学史講話』の序文を読んだ。そうして非常に動かされた。しかしそのなかに「とにかく余は今度我が子のあえなき死ということによりて、多大の教訓を得た。名利を思うて煩悶絶え間なき心の上に、一杓・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫