・・・幼稚園時代から引つづいた男の子と女の子との共同生活の感情が、成長した若い男女の社会的な働く場面へまで延長されている社会なら、両性の共感の輪も内容もひろげられ、明るくされ、今日つかわれる異性の友情という表現そのものが、何か特定な雰囲気を暗示し・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・リズムが、真に現実にたえる制作の方法であるならば、ひとりの作家がその実際の条件にしたがって、ごく発端的な一歩から描き出し、永年の過程のうちにより広い歴史の展望とそこに積極の要素となってゆく人間の物語の延長にもたえるはずではないだろうか。手早・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ 換言すれば行動的ヒューマニズムにおける個人主義は十七世紀ヒューマニズムの個人主義の近代的延長ではなく、少くとも革命と機械を知り、それに掣肘を受けた多分の社会的若くは全体的組織の意識をもった個人主義である。つまり孤立的な静的な自我の意識・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・並んで流れつつ、それは別な河、という存在ではなくて、澎湃たる日本の新民主主義文学のゆたかにひろい幅と、雄大なその延長とのうちにとけ入り、包括されるはずのものと思う。伸びる芽には必ずきっさきがある。動く車に軸がある。歴史の前進の主軸が、現世紀・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・而も、両性関係における行動性というものも、本質に於ては日本旧来の男の恋愛行動のままの延長であったことは我々を深く考えさせる点であると思う。 能動精神という声はフランスにも日本にも聞えており、何か文化の希望を約束するかのようではあったが、・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・二親たちの生涯の延長として、その延長されたいのちが遭遇する歴史の姿として、私がこれらの愛するものの傍で、よしや薬をのませることさえ出来なかったとしても、私たち親と子は正真正銘親と子で、どんな力も其をさえぎることの出来ない、いとしい世代の流れ・・・ 宮本百合子 「白藤」
・・・ーヤの閉店時間 モスクのストローヤが僅にセントルで十二時まであるだけであとは八九時にしめてしまうため夜勤の労働者が熱い обед をたべられない モスソヴェートは附近の労働状態を考慮して閉店時間の延長を許可するであろう。 対外文化協・・・ 宮本百合子 「一九二九年一月――二月」
・・・ことで会の本質の自由を強調し、文芸懇話会の延長と見られては困る、何物の援助も受けない独自的存在であり、自然にこの会の成立が各人に要求されて出来たものであると語っている。 が現在この会に会則、綱領のないことが、直ちに性質の自由を意味すると・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・ところが、このようにしてはじまった婦人の社会的地位の決定は、おどろくべき延長で今日もなお地球の大部分の文明国においても本質的には変化させられないままで来ているのである。 日本が今やっと民法における婦人の地位の改良に着手した。日本が近代資・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・数多の柱列を充分活かすだけの直線の延長が足りないとでも説明すべきなのか。京都の万福寺の建物では智的であり意力的な線の勁さを感じたが、此方の建物から其感銘は受け難かった。時間がおそかったので、本堂の扉が住持が閉めたところであった。宝物は一つも・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
出典:青空文庫