・・・傍の人もみな驚いて、これはどうしたことですか、とあの人に訊ねると、あの人の息せき切って答えるには、「おまえたち、この宮をこわしてしまえ、私は三日の間に、また建て直してあげるから」ということだったので、さすが愚直の弟子たちも、あまりに無鉄砲な・・・ 太宰治 「駈込み訴え」
・・・いまは、まず少しずつ生活を建て直し、つつましい市井人の家をつくる。それが第一だ。太宰も、かしこいな。何を言ったって、人から相手にされないのでは、仕様がないからね。私は、もともと、そんなに嘘つきじゃないんだ。権威を持ちたい。自身が、死んでから・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・が、ケレンスキーのブルジョア民主主義者らしい日和見戦術で、半封建的であると共に資本主義の土地関係を根本から建て直しが敢行され得るかのように想像したのが間違いであった。臨時政府はツァーの絶対制を立憲政治へこぎつけるまでがせいぜいで、失業と飢と・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・家も冬までには建て直して小ぢんまり、文化的にする由[自注16]。国男夫婦は家が直ると心持まで変ることを大変たのみにして、何でもすべていいことは家が直ってからという期待につながれて居ります。この心理は面白いのです。私も激励して笑い乍ら「居は心・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・人類につくすことを主要な点として押し出されたこと、而して、そのおし出しが、現実生活の中に在って既に一つの人間性の非力化へ導く広き門であることを一部の作家が論じたが、その補強的な論の建て直しは当時の気分によって望ましいようには受けいれられなか・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・教育方針は根本からの建て直しだ。あらゆる学校は「学問をすべての勤労者に」という立場から文化を、専門技術を人民のものとして身につけ高める為にこそ動くようになって来た。 いたるところに新しい活動がおこり、いるのは人手だ。あらゆる場所でいるの・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ 五ヵ年計画は、ソヴェト経済の社会主義的建て直しだ。農村でも都会でも、内閣そのものの中でさえも、五ヵ年計画完成のためにあらゆる方面の階級的見直しをやった。大衆自身が、また新しい力で自身の行くべき方角と取るべき態度を考え始めた。 そこ・・・ 宮本百合子 「文壇はどうなる」
出典:青空文庫