・・・失業しないまでも賃銀半額に引下げられた労働者の暮しはどんなものか。その中で赤坊は産めないからというので、姙婦相談所へ出かけ、避姙を教わったり、人工早産して貰ったりする。 だが姉妹。目先の便利でゴマ化されるのはやめよう。プロレタリアート婦・・・ 宮本百合子 「「市の無料産院」と「身の上相談」」
・・・ また同伴者作家というものを考えて見ても、それは決して、プロレタリアートの課題を課題とする作家同盟の基本的な方針に離反したり、その到達点を引き下げて自身の低い段階を合理づけたりする態度を予想してはいない。そのことについては全く逆である。・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ 経済再建のトップに立つ日本の紡績界の半封建のままの少女労働の搾取に対して、厚生省が、一、女工寄宿舎制度の撤廃、二、遠隔地からの女工員募集禁止、三、女子の就業率引下げと男子労務の増強、四、通勤による工員の確保、などを要望すると語られてい・・・ 宮本百合子 「その檻をひらけ」
・・・ ソヴェト同盟をのぞく世界じゅうのプロレタリア大衆は、めいめい本国、植民地の職場で、賃銀引下げ、労働強化に反対し、ストライキし、ダラ幹征伐を行わなければならないでいる。それだのに、その小説で職場の革命的反対派を描かないようなダラ幹派プロ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・大衆の要求に沿うた内容ということは、いずれの場合でも決して、現代の民衆生活の一番低い部分の水準に迎合して、そこ迄引き下げ止めておくということではない。ましてや、日常生活から生じる疑問を特定の傾向の中へそらして流して行くことでは決してないので・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・今回厚生省のきめる家賃は、一つ一つの新建家屋について何年目かには引下げを条件としてのことなのだろうか。それとも、ずっとそういう方法できまるわけなのだろうか。店子が家賃を払ってゆくのは三年か四年のことではない。借家で産湯をつかった大多数の国民・・・ 宮本百合子 「私の感想」
・・・醜くくはない顔の大きい目が、外眦を引き下げられて、異様に開いて、物に驚いたように正面を凝視している。藤子が食い付きそうだと云ったのも無理は無い。 附き添って来たお上さんは、目の縁を赤くして、涙声で一度翁に訴えた通りを又花房に訴えた。・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
出典:青空文庫