・・・ 紳士はだんだんそれを引き延ばしました。間もなく長さ十米ばかりの細い細い絹糸でこさえたようなはしごが出来あがりました。「いいかい。こいつをね。あの栗の木に掛けるんだよ。ああ云う工合にね。」紳士はさっきの二人の男を指さしました。二人は・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・恋人との婚姻もこのまま永久に引き延ばしていたかった。そして、安次を最も残忍な方法で放逐して了ったならば、彼は秋三の嘲笑を一瞬にして見返すことが出来るように思われた。七 安次は股引の紐を結びながら裏口へ出て来ると、水溜の傍の台・・・ 横光利一 「南北」
・・・彼の情熱は緩き音楽の調子によって動き、角々のきまりとなり、永く引き伸ばしたことばに終わる。この劇的雄弁術を演技だと考えていた吾人は、デュウゼが新しい考え方と演じ方とをもって出現するに及び革命に逢着した。デュウゼにとっては動作は終局でない。真・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫