・・・勇敢な看護婦・皇后エリザベスは小柄で華奢で、しかも強靭な身ごなしで、歩道によせられた自動車から降り立った。その背たけはすぐわきに立っていた私より、ほんの頭ぐらいしか高くなかった。どこでも、私はその学校ナイズすることが不得手で、大正の初めに苦・・・ 宮本百合子 「女の学校」
・・・にも、強靭なリアリズムの手法と並んで、クリンガーの影響と言われたケーテのシムボリズムがところどころに現れていることである。死の象徴として骸骨が「織匠」第二枚目にあらわれているばかりでなく、「死と女」その他後期の画面にも使われている。 ロ・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・社会的な責任の自覚やある意味で仕事の上での闘志も強靭にされてゆくのではないでしょうか。よく世間で、なかなかやるが結局お嬢さん芸でね、奥さん芸でね、という批評を、殿様芸に並べていうのは、ここのところの機微にふれていると思います。 では、お・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・日本のいく久しい封建社会の歴史にもたらされて、日本の知性は、強靭な知的探求力とその理づめな権威力をもつより、いつも感性的である。その日本の感性的な知性が西欧のルネッサンスおよびそれ以後の人間開花の美に驚異したのが「白樺」の基調であった。・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・彼の知性が、よりひろく、強靭であろうと欲している、その角度から少くとも、私小説的な要素を否定している意味での中間小説に対して、単純な断定をさけさせたのであったと考えられる。 昨年十二月号『群像』の月評座談会で、林房雄は、宇野浩二の書いた・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・この母の時代の姿であらわされているアメリカの女の強靭な生活力が、次の世代である娘の時代の姿として「この誇らかな心」となって表現されてきていることは、非常に興味深いことである。パール・バックは、「母の肖像」で豊富な生活力が自然の豊かさそのまま・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・十六の少女として父さんと浜で重い材木を動かす手伝いをして働いた時から、ずっと勤労の生活が経験されていて、その経験は、天性の気質に、一つの現実的な厚いゆたかで強靭な裏づけを与えることとなっている。 作者がある意味で話し上手で、楽な印象を与・・・ 宮本百合子 「『暦』とその作者」
・・・ 現実は豊饒、強靭であって、作家がそれに皮肉さをもって対しても、一応の揶揄をもって対しても、大概は痛烈な現実への肉迫とならず、たかだか一作家のポーズと成り終る場合が非常に多い。作家は、現実に向って飽くまで探求的であり、生のままの感受性を・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・ 益々強靭である故に美しく、複雑な事象の波瀾におどろかない史眼、その洞察力の故に一層感動深いリアリズムを求めてゆくしかないのではなかろうか。文学におけるリアリズムもやはり世界史的な拡大のときにあって、従来対置されているロマンティシズムが・・・ 宮本百合子 「作家と時代意識」
・・・時には、うんざりさせてしまうような調子の高い陽気さも彼女の裡にはしっくりと融和されて、女性の強靭な弾力を輝やかせる一色彩となりますでしょう。 彼女こそは愛すべき永遠の女性として、地上の歓びを生むべきなのでございます。 けれども、C先・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
出典:青空文庫