・・・の名人芸を打ち破って溢れ出るスタイルを待望していた。そんな作品がどこかの雑誌に載りはしないだろうかと待っていた。「人間」や「改造」や「新生」や「展望」がどうして武田さんの新しい小説を取らないのかと、口惜しがっていた。私は誇張して言えば、毎日・・・ 織田作之助 「武田麟太郎追悼」
・・・ × まったく新しい思潮の擡頭を待望する。それを言い出すには、何よりもまず、「勇気」を要する。私のいま夢想する境涯は、フランスのモラリストたちの感覚を基調とし、その倫理の儀表を天皇に置き、我等の生活は自給自足のアナキ・・・ 太宰治 「苦悩の年鑑」
・・・みんな、平和を待望して居ります。 私は、満洲の春を、いちど見たいと思っています。けれども、たぶん、私は満洲に行かないでしょう。満洲は、いま、とてもいそがしいのだから、風景などを見に、のこのこ出かけたら、きっとお邪魔だろうと思うのです。日・・・ 太宰治 「三月三十日」
・・・反動期を通じて、チェホフが一見しずかそうな彼の文学の底を貫いてもちつづけた科学性に立つ正義感の水脈をつたわり、つつましいコロレンコが若いゴーリキーのうちに未来への期待をかけたその社会性、人民性に対する待望の樋をつたわって、一九一七年の「十月・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・より堅くされた明日の世界建設のための動力である輪の一くさりとなれる日の来ることをどんなに待望しているでしょう。そのためにも、日本の婦人大衆はよく組織され勇敢聰明に保守勢力とたたかい、日本の民主化を決定的に前進させることを自分たちの責任として・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・女性を憐れむばかりではなく、半身である女性とともにこそ男の民主的生活への解放があることを知る男らしさを待望いたします。〔一九四六年九月〕 宮本百合子 「自然に学べ」
・・・の出現を待望するのでなく、文学批評そのものに、新たな、発展的な客観性の確立を求める気分の醸成されていることは、見のがせないことである。その新しい動力となり得る気分を理解し、作品活動の中に正当に導き出して行くことこそ、「現実そのものから現実を・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・私はバックの現実を観る目の力と幅、深さが益々鍛錬されて、いつかそういう題材を、阿蘭のような女や男の側から描いた作品の出ることを待望する。 日本が中国と地理的には全く近く、過去の文学的伝統の中に、あれ程深く中国文学の影響を受けながら、現代・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
・・・ちがった複雑な生活の感情が日々を貫いているのだから、その生活を掴んだような映画の出ることは、皆がひとしく心のどこかで待望しているところであろうと思われる。ところでそういう人生的な映画はどの程度まで製作され得るのだろうか。今日の観客は、期待と・・・ 宮本百合子 「観る人・観せられる人」
・・・西欧の資本家は利潤と返還資金を待望している。英国がこれらを供給しなければならぬ。 それ故労働組合運動は経済単位としての英国国家組織のなされる提案に密接な関係をもって従わなければならぬ。」ソラ、巡査が手をあげたぞ!今のうち・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫