・・・「しかし存外好さそうですね。僕はもう今ごろは絶望かと思った」「多加ちゃん? 多加ちゃんはもう大丈夫ですとも。なあに、ただのお腹下しなんですよ。あしたはきっと熱が下りますよ」「御祖師様の御利益ででしょう?」妻は母をひやかした。しかし法華経信者・・・ 芥川竜之介 「子供の病気」
・・・それがまた一ト通のことなら宜いが、なかなかどうしてどうして少なくないので、先ず此処で数えて見れば、腰高が大神宮様へ二つ、お仏器が荒神様へ一つ、鬼子母神様と摩利支天様とへ各一つ宛、御祖師様へ五つ、家廟へは日によって違うが、それだけは毎日欠かさ・・・ 幸田露伴 「少年時代」
・・・「誰だってそうおもわねえものは無えんだ、御祖師様でも頼みなせえ。「からかいなさるな、罰が当っているほうだ。「ハハハ、からかいなさんなと云ってもらいてえ、どうも言語の叮嚀な中がいい。「ガリスの果と知れるかノ。「オヤ、気障な・・・ 幸田露伴 「貧乏」
出典:青空文庫