・・・これもまた信じている先生の言葉であったから、心機立ちどころに一転することが出来た。今日といえども想うて当時の事に到るごとに、心自ら寒からざるを得ない。 迷信譚はこれで止めて、処女作に移ろう。 この「鐘声夜半録」は明治二十七年あたかも・・・ 泉鏡花 「おばけずきのいわれ少々と処女作」
・・・そうして食卓の上に刻まれた彼女自身の名前を見いだした最後の心機の転回に導かれるまでこのピアノ曲はあるいは強くあるいは弱く追跡して来る。突然この音が絶えると同時に銀幕のまん中にはただ一本の旗が現われ、それが強い砂漠のあらしになびいてパリパリと・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・一瞥心機を転じて身外の万物を忘れ、其旧を棄てゝ新惟れ謀るは人間大自在の法にして、我輩が飽くまでも再縁論を主張する由縁なり。殊に男女の再縁は世界中の普通なるに、独り我日本国に於ては之を男子に自由にして女子に窮窟にす。自から両者対等の権力に影響・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
出典:青空文庫