・・・自分の心にあるものを私どもは話す、受けて応えるこだまこだまの美しさ、そういうものを求めて来ていらっしゃると想像します。 あなた方一人一人は英雄ではないでしょう。私どもが一葉より文学に於て才能が劣っているかも知れない。しかし歴史は新しい、・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・ 思案に暮れた独言に、この夜中で応えるのは、死んだ嫁が清元のさらいで貰った引き幕の片破ればかりだ。「全くやんなっちゃう」 今日風呂へ行くと、八百友の女房が来ていた。世間話の末、「おばさんところの異人さん、いつお産です? なか・・・ 宮本百合子 「街」
・・・気の毒で、此方から応える声は一つもしなかった。 けれども、家の安否を気遣う人々は、東京から来た列車が近くに止ると、声の届くかぎり、先の模様を聞こうとする。「貴方は何方からおいでです?」「神田。」「九段のところは皆やけましたか・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
出典:青空文庫