・・・「よっぽど悋気深い女だよ」と、妻は僕に陰口を言ったが、「奥さん、奥さん」と言われていれば、さほど憎くもない様子だ。いろいろうち解けた話もしていれば、また二人一緒になって、僕の悪口――妻のは鋭いが、吉弥のは弱い――を、僕の面前で言って・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・四には悋気深ければ去る。五に癩病などの悪き疾あれば去る。六に多言にて慎なく物いひ過すは、親類とも中悪く成り家乱るゝ物なれば去べし。七には物を盗心有るを去る。此七去は皆聖人の教也。女は一度嫁して其家を出されては仮令二度富貴なる夫に嫁すとも、女・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・四には悋気深ければ去る。五に癩病などの悪き病あらば去る。六に多言にて慎なく物いい過すは親類とも中悪く成り家乱るる物なれば去るべし。七には物を盗む心有るは去る。此七去は皆聖人の教也。」 聖人というのは支那の儒教の聖人のことなのだが、女の生・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・と断言している。悋気も女はつつしむべし、と荷風には考えられており、女に悋気せしめる男の側のことは触れられない。その荷風の見かたに適合した何人かの「婦女」がかつて彼の「後堂に蓄え」られたこともあったのである。 私が、荷風のロマンティシズム・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
出典:青空文庫