・・・は深更家に帰りて面目なかりしが、今夜は妻女何処に行きしや、その場所さえ分明ならずなどの奇談もあるべしと想像したらば、さすがに磊落なる男子も慚愧に堪えざるのみならず、これは世教のために大変なりとて、自ら悚然たることならん。然るに婦女子の志の有・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・、やがて百名の警官が出動して、丸の内署長がバルコニーから演説して、やっと群集が散った後には、主を失った履ものだの、女の赤いショールだのが算を乱していたという記事は、その場に居合わせなかった私たちにも、竦然とした感じで生々しい。 私たち誰・・・ 宮本百合子 「「健やかさ」とは」
・・・ そのひとはそういう今日の人の気風に竦然としたと語った。 小田急の電車の中で、パーマネントの若い女の髪をつかんで罵りながら引っぱっている男を、ぐるりから止めることもできないような雰囲気で、実にこわかったということをもきいた。 日・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫