・・・同じスラヴ人の同時代人には二十年の流刑に堪えたチェルヌイシェフスキーをはじめ、七〇年代八〇年代以降今日に至るまでに、人類の中で最も堅忍と不撓不屈の意力によって歴史を押しすすめた更に多くの誇るべき大人物がスラヴ人の中から出ているのだから――。・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・○彼の情熱的意力におけるわれわれの意志喪失 p.234○ドストイェフスキーよりもシェイクスピアは人間の精通者である。p.226 ツワイクはDとレンブラントとを同類としている。しかしこれは当っているだろうか、明と暗との・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・京都の万福寺の建物では智的であり意力的な線の勁さを感じたが、此方の建物から其感銘は受け難かった。時間がおそかったので、本堂の扉が住持が閉めたところであった。宝物は一つも見られず。千呆禅師が天和二年に長崎の饑饉救済をしたという大釜の前に立って・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・ いつの時代でも、最も人間らしいぴちぴちした理性と情感とをもった人々は、柔軟でつよいその意力で、歴史というものを、彼等の生きたその時代の今の上にとらえた。レオナルド・ダ・ヴィンチにしても、ヨハネス・ケプラーにしても、決して歴史を過去のも・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・私が、何としても、自分が健康で、活気に満ちて、生活に対する意力を感じて居るのは事実である。その明快な自分を傍観する彼は、如何に私が幸福だからと云って、自分をも亦幸福にする事は出来ないのだ。 どんな心持で、私は、愛する者と偕に棲み、偕に仕・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・正しい発展のために健康な意力が必要とされる。社会の事情はこのような場合を、プロレタリア作家の間に限らず益々広い社会生活の面で、特に婦人の側からの切実な発展的苦悩として引き出しつつある。 平林英子の「育むもの」はこのような意味において、或・・・ 宮本百合子 「夫婦が作家である場合」
・・・才能っていうか、生きる意力っていうか、そういうものがよっぽどなければ、その深刻な打撃を芸術と生きる態度の上のプラスにするのがむずかしいもの。大変な努力だろうとしみじみ思うわ」 好子の良人は或る機械工場に勤めている技師であったが、この夫婦・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
・・・一方に深い質問を抱いてそれを追究して新しい何かの価値を人生にもたらして来るような、そういう建設の意力を、ものわかりよさはもっていない。ものわかりよさは、いつでも現在その人の生活する世間で通用している型どおりのものの上手なとりあわせを心得てい・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・が連載されているが、山本有三氏が、どんな新しい意力と用意とでもって、今日の彼の読者の胸底に疼いている如何に生くべきかという問いに答えて行くであろうかと興味を覚える。人及び芸術家としての幸福とは、果してどういうところに在るものであろうか。特に・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・漱石は、だが一身上の必要から、やっぱりいやな大学にも出かけなければならず、そのいやな大学の講義に当時の胸中の懊悩をきわめて意力的にたたきこんで、彼の最大不機嫌中に卓抜な英文学史と文学評論とを生み出した。 荷風の方は、家父もみっともないこ・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
出典:青空文庫