・・・河の水面のプロフィルが河長に沿うて指数曲線か双曲線のような恰好をしている。その脇に沿うてほぼ同じ勾配の道路をつけるから、自然に途中で道と河との高度差の最大な処が出来るのであろうかと思われた。 水力発電所が何カ所かある。その中には日本一の・・・ 寺田寅彦 「雨の上高地」
・・・普通の理論からすれば、ダルトン方則で、単に普通の指数曲線的垂直分布を示すはずのが、事実はこれに反して画然たる数個の段階に分かれるのである。仮定の抜けている理論の無価値なことを示す適例である。この場合の機巧もまだ全く闇の中にある。ことによると・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・たぶん一種の指数曲線か何かに従って、漸近的にゼロに向かって行くだろう。 こんな幸福があまり持続しては、困る事だろう。幸福も不幸福も、変化の瞬間が最高点で、それからあとは、大地震の余震のように消えて行く。 そのおかげで、われわれは、こ・・・ 寺田寅彦 「鑢屑」
・・・民間の経済雑誌に、国際間の経済統計、生産指数などの発表されることを禁じた日本の軍部は、そうして世界の現実を人々の目からかくしたと同時に、非合理な戦争によって熱病のように混乱、高騰、崩壊する日本国内生産と経済事情を――人民生活の全面的な破壊の・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・現実の物資の条件をどう理解して、どのような生活設計を立てるべきかという指導を目的としたものであったが、そこに書き出され、物価指数、生計指数として示されている数字は、ほとんどその大部分が古いものであり、やや誇張すれば二年前ぐらいのものであった・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・ 統計で見れば、平面的に見られる家屋の全焼全壊の指数、半焼半壊の指数を、生活の現実の中で、具体的に、即物的に数え直して見るなら、そこには全く生活の全破壊、混乱の内容が現れて来る。夜具一枚、布団一枚、皿小鉢から下駄一足、傘一本、バケツ一箇・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫