・・・天下一般の大損亡というべし。先にこの開成所をして平人私有の学校ならしめなば、必ずかかる災害はなかるべきはずなり。官学校の失、五なり。一、私立の塾には元金少なくして、書籍器械を買い塾舎を建つる方便なし。その失、一なり。一、古来、日本に・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・風致もなく快楽もなきのみならず、あるいは行過ぎ、あるいは回り道して、事実に大なる損亡を蒙る者なきに非ず。一身一家の不始末はしばらくさしおき、これを公に論じても、税の収納、取引についての公事訴訟、物産の取調べ、商売工業の盛衰等を検査して、その・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・故に夫婦家に居て互いに苦労を共にするは、一方において二重の苦労に似たれども、その苦労の代りには一人の快楽を二人の間に共にして、即ち二重の快楽なれば、つまり損亡とてはなくして苦楽相償い、平均してなお余楽あるものと知るべし。 されば夫婦家に・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・然るに今その敵に敵するは、無益なり、無謀なり、国家の損亡なりとて、専ら平和無事に誘導したるその士人を率いて、一朝敵国外患の至るに当り、能くその士気を振うて極端の苦辛に堪えしむるの術あるべきや。内に瘠我慢なきものは外に対してもまた然らざるを得・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
出典:青空文庫