・・・であることを摘発しつつ、では何故そんなに俗っぽくて常識万能の鼻もちならなさが当時の社会に瀰漫したかという原因については、深く追究していない点である。同時に、一日本人としての漱石自身が十八世紀のイギリスを俗っぽいと感じ、下等だ、と感じるその感・・・ 宮本百合子 「風俗の感受性」
・・・真実の愛もない夫婦の生活が、多く、如何程の人格的偽瞞と虚偽に満ちているかを摘発する。新たな恋愛価値の創始、人格の飛躍が、一方、色情狂めいた性的好奇心の横行とともに、今日の社会には到るところに叫ばれていると思うのである。 けれども、翻って・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・ プロレタリア文学の運動は、昨今、非常に意味ぶかい第二次的な発展的時期に入っているということは、広い目で見ると、逆に大宅、杉山両氏によって摘発されたもとの指導的評論家の退転という事実そのもののうちにも察しられるように思う。急激なテンポで・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・性質のものであるかを摘発し、今日の現実に闘争する革命的大衆にアッピールすべき農民の姿を小説のどこにも見出し得なかったことを「青年」について批判している。特に高崎郡領一揆と大久保利通にその例を見る維新の封建地主勢力の庇護のもとにあった志士団と・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・バルザックが彼の太く膏ぎったペンで、結婚の儀式のかげにかくされている金銭取引の憎むべき社会悪を摘発してから、フランスの社会は多くの推移を経験した。それにもかかわらず、結婚生活というものはその形式の本質の中に、アンネットの要求を必然ならしめる・・・ 宮本百合子 「未開の花」
・・・女が最後の武器として無感動を装うのを、さらに摘発し覆さなければやまないほど私は残酷であった。――そうして結果はどうなるのか。女はますます無恥であるように努力するだろう。私にはただ後悔が残った。 他人の製作に対する私の心持ちにも同じような・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫