・・・御堂ができるや否や待ち構えていた我々は意識を攫んでは抛げ、攫んでは抛げ、あたかも粟餅屋が餅をちぎって黄ナ粉の中へ放り込むような勢で抛げつけます。この黄ナ粉が時間だと、過去の餅、現在の餅、未来の餅になります。この黄ナ粉が空間だと、遠い餅、近い・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・ 私とても、言葉の上の皮肉や、自分の行李を放り込む腹癒せ位で、此事件の結末に満足や諦めを得ようとは思っていなかった。 ――一生涯! 一生涯、俺は呪ってやる、たといどんなに此先の俺の生涯が惨めでも、又短かくても、俺は呪ってやる。やっつ・・・ 葉山嘉樹 「浚渫船」
・・・今までのように何を言ってもいけない、何を書いてもいけない、お前たちは黙って死んで行け、さもなければ牢屋へ放り込むというのでは自分たちの声を発揮することはできません。これから新日本文学会なんかで計画しているいろいろな文学の集り、たとえばこうい・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
出典:青空文庫