・・・記者は封建時代の人にして、何事に就ても都て其時代の有様を見て立論することなれば、君臣主従は即ち藩主と士族との関係にして、其士族たる男子には藩の公務あれども、妻女は唯家の内に居るが故に婦人に主君なしと放言したることならんか。若しも然るときは百・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・例えば芸妓など言う賤しき女輩が衣裳を着飾り、酔客の座辺に狎れて歌舞周旋する其中に、漫語放言、憚る所なきは、活溌なるが如く無邪気なるが如く、又事実に於て無邪気無辜なる者もあらんなれども、之を目して座中の婬婦と言わざるを得ず。芸妓の事は固より人・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・一切の事情をば問わずして、ただ喫驚の余りに、日本の紳士は下郎なりと放言し去ることならん。君らは斯る評論を被りて、果たして愧ずる所なきか。 西洋諸国の上流紳士学者の集会に談笑自在なるも、果たして君らの如き醜語を放って憚らざるものあるか、我・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・公武合体等種々の便利法もありしならんといえども、帝室にして能くその地位を守り幾艱難のその間にも至尊犯すべからざるの一義を貫き、たとえば彼の有名なる中山大納言が東下したるとき、将軍家を目して吾妻の代官と放言したりというがごとき、当時の時勢より・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・をよむことは、決して無駄ではないと思う。なぜなら今日またふたたび「大人の文学」を放言して、パージにかかわらず事大主義の政治的発言にまで立ち至っている林房雄の考え方は、一九三七年彼が官吏・軍人・実業家の関心事、すなわち侵略と搾取への情熱を文学・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ 私共は、斯様な放言に対して、総ての女性の尊厳の為に飽くまでも申さなければなりません。斯様な批評を下す人は従来日本の女性が魂まで殺戮されて来た半婢半娼の待遇を、家長――男性の女性に対すべき態度だと思い、その無自覚な沈黙と奴隷的な服従とを・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・石川達三氏は、今日の人民的な民主主義をうちたてようとしているすべての正直な人々の努力の真只中でこういう放言をしながら、四国地方の反動団体の巻頭言などを書いています。 また先日日比谷で行われたユネスコの大会で、ユネスコ文学のことについて演・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・尾崎行雄は年甲斐もなく亢奮して、日本の国語が英語になってしまわなければ、日本で民主精神なんか分りっこないと放言しているのには、日本のすべての人がおどろいた。元来民主主義は英語の国から来たものだからだそうだ。 カクテール・キングとあだ名さ・・・ 宮本百合子 「長寿恥あり」
・・・私として飾りなく云うと、こういう紙面でのあい対がおのずから期待している性質を正しく活かすために、例えば私などよりより深く見られるところに貴方がおられる或る種の文学放言などに対し社会的な意味を自覚している作家としての立場から公然たる一言を見出・・・ 宮本百合子 「不必要な誠実論」
・・・田舎暮しからみたら東京の生活は比較にならないほどいい、と云われる言葉は、都会の空気に代々馴れて、結核なども陽性反応を示す体質になっている人々の放言である。 勤労青少年たちの体はよくない。中国地方の或る工業地帯が故郷である若い人が、この間・・・ 宮本百合子 「若きいのちを」
出典:青空文庫