・・・ 全く敗亡て、ホウとなって、殆ど人心地なく臥て居た。ふッと……いや心の迷の空耳かしら? どうもおれには……おお、矢張人声だ。蹄の音に話声。危なく声を立てようとして、待てしばし、万一敵だったら、其の時は如何する? この苦しみに輪を掛け・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」
・・・そして真率朴訥という事から出て来る無限の大勢力の前に虚飾や権謀が意気地なく敗亡する事を痛快に感じないではいられない。 以上の比較は無論ただ津田君の画のある小さい部分について当て嵌るものであって、全体について云えば津田君の画は固より津田君・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・ 一九四五年八月十五日から植民地在住の日本人にあらわに思い知らされた敗亡する侵略者としての足どりは、それらの人々にいってみればさか恨みの感情をもたせたとも思われる。日本の軍国主義にだまされた自身のいきさつを思うよりも、こんな目にあうその・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・命をそういう風な形式で捨て、そういう風な敗亡に陥らせるような原因は王様自身が作りながら、皆が弱いとか、意気地がないとか叱られなければならなかった彼等の仲間の一人になって、一生を終ることが出来ましょうか。 自分が、この自分以外の誰でもない・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・とにかく、祖国を敗亡から救うかもしれない一人の巨人が、いま、梶の身辺にうろうろし始めたということは、彼の生涯の大事件だと思えば思えた。それも、今の高田の話そのものだけを事実としてみれば、希望と幻影は同じものだった。「しかし、そんな青年が・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫