・・・とある(彼得、而して斯かる新天地の現わるる時に、義を慕う者の饑渇は充分に癒さるべしとのことである。 矜恤ある者は福なり、其故如何? 其人は矜恤を得べければ也、何時? 神イエスキリストをもて人の隠微たることを鞫き給わん日に於てである、其日・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・それができたらそれこそほんとうの芸術としての漫画映画の新天地が開けるであろうと思われる。現在の怪奇を基調とした漫画は少しねらいがはずれているのではないか。実在の人間に不可能で、しかも人間の可能性の延長であり人間の欲望の夢の中に揺曳するような・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・それでたとえば昔、広重や歌麿が日本の風土と人間を描写したような独創的な見地から日本人とその生活にふさわしい映画の新天地を開拓し創造するような映画製作者の生まれるまでにはいったいまだどのくらいの歳月を待たなければならないか、今のところ全く未知・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・毎日こういう生徒を相手にしているのでは、ウンラートでなくても、どこか他に転向の新天地が求めたくなるであろうという気がするのであった。 映画では、はじめにウンラートの下宿における慰めなき荒涼無味の生活の描写があり、おまけにかわいがって飼っ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・疑って考えかつ自然について直接の師を求めた者にいたって始めて一新天地を開拓しているの観がある。 読書もとよりはなはだ必要である、ただ一を読んで十を疑い百を考うる事が必要である。人間の知識を一歩進めんとする者は現在の知識の境界線まで進むを・・・ 寺田寅彦 「知と疑い」
・・・早婚が奨励されていること、子供もたくさん生むようにとすすめられていること、結婚して暮すべき新天地というものが満州や支那へまでひろがって考えにのぼって来ること。そういう声々の発せられるところは求心的であるが、心へ及す形は遠心的で何だか落着けな・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・信仰と希望とのみに頼って、勇ましく新天地に活動しようと云う、その雄々しい決心のみでさえ、男性を鼓舞するのに充分であったのに、いざ曠野での生活が始ってからは、勇ましい一人の人間として、頼らず怨まず自己の職分を尽して行く。あらゆる困窮の裡にあっ・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ブル新聞では「新天地満州国」とか、日本の「大衆の幸福の鍵満州国」という風な太鼓をたたいているから、失業させられ、食う道を求めて焦っている労働者たちは到頭心を動かされた。僅かの旅費の補助を土台とし遠い満州国へ移住するのだからと家財道具をも売り・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
出典:青空文庫