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・・・けれども、その動機に鋭い直覚を持つ者は、切角の施物も、苦々しく味わうことは無いだろうか。 反対の或る一部は、まるで無感覚な状態に在る。ぼんやりと、耳を掠める風聞。――然し、兎も角、自分達の口腹の慾は満たされて行くのだし……必要なら、誰か・・・
宮本百合子
「アワァビット」
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・・・句読点のない短い手紙の中には、祖母さんが教会の入口で施物を集めて倒れながら足を折った、と書いてあった。丹毒にとりつかれた、と書いてあった。もっと後になって、ゴーリキイの知った祖母の生涯の終の有様は彼を震撼した。二人の従兄弟と子もちのその妹―・・・
宮本百合子
「マクシム・ゴーリキイの伝記」