・・・「我らに日用の糧を今日も」じゃない「今日こそは与えたまえ」。ついでに我らにガランスを与えたまえ。あとは腹がへっているからぬかします。「アーメン」。ええと我らにガランスを与えたまえ。ガランスを与えたまえ。我らに日用の糧を与えたまえ。我らに日用・・・ 有島武郎 「ドモ又の死」
・・・憖いに早まって虎狼のような日傭兵の手に掛ろうより、其方が好い。もう好加減に通りそうなもの、何を愚頭々々しているのかと、一刻千秋の思い。死骸の臭気は些も薄らいだではないけれど、それすら忘れていた位。 不意に橋の上に味方の騎兵が顕れた。藍色・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」
・・・予め心積りをしていた払いの外に紺屋や、樋直し、按摩賃、市公の日傭賃などが、だいぶいった。病気のせいで彼はよく肩が凝った。で、しょっちゅう按摩を呼んでいた。年末にツケを見ると、それだけでも、かなり嵩ばっていた。それに正月の用意もしなければなら・・・ 黒島伝治 「窃む女」
・・・「今から去んで日傭でも、小作でもするかい。どんなに汚いところじゃって、のんびり手足を伸せる方がなんぼえいやら知れん。」 ふと、そこへ、その子の親達が帰りかけに顔を出した。じいさんとばあさんとは、不意打ちにうろたえて頭ばかり下げた。・・・ 黒島伝治 「老夫婦」
・・・しがない日傭人の兵隊たちは、戦争よりも飢餓を恐れて、獣のように悲しんでいた。そして彼らの上官たちは、頭に羽毛のついた帽子を被り、陣営の中で阿片を吸っていた。永遠に、怠惰に、眠たげに北方の馬市場を夢の中で漂泊いながら。 原田重吉が、ふいに・・・ 萩原朔太郎 「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」
・・・ 小学教育の事 二 平仮名と片仮名とを較べて、市在民間の日用にいずれか普通なりやと尋れば、平仮名なりと答えざるをえず。男女の手紙に片仮名を用いず。手形、証文、受取書にこれを用いず。百人一首はもとより、草双紙その他、民間・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・村の労銀というのは恐らく従来の救済工事の日当や日傭労働賃銀を標準にしてのことであったろう。むしろ意外な苦情を受けた専門家たちは「労銀が多すぎる為に起る弊害について大いに考えさせられた。副業が本業になることを恐れるためである」その問題は、それ・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ 一九五〇年になって、基本的人権ということばが日用語にはいっているとき、日本では東京全都民の指紋をとることにした、という現象は、世界にむかって、日本そのものが何人かにとって一つの容疑者の檻になりつつあるということを語るのだろうか。あるい・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・ この節では国際結婚という言葉も日用語に近くなった。モードについて書かれている記事の中に、ロマネスクは目下モードにおける国際的傾向であると書かれているとき、むずかしい言葉でかいてあるわ、と批難する娘さんたちはいない。日本の娘のおどろくよ・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・文学語から日用語に移ろうとしている。しかし、このことは、小林秀雄氏が何処かで云っているように、単に既成作家、評論家が今の調子をつづけて円熟し、ものわかりよくなった結果として、年齢とともに期待し得るというような実質を意味するものではないと思う・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
出典:青空文庫