・・・家を出でて土筆摘むのも何年目病床を三里離れて土筆取 それから更に嬉しかったことは、その次の日曜日にまた碧梧桐が家族と共に向島の花見に行くというので、母が共に行かれたことである。花盛りの休日、向島の雑鬧は思いやられるので、・・・ 正岡子規 「病牀苦語」
・・・ 九月七日 次の日は雨もすっかり霽れました。日曜日でしたから誰も学校に出ませんでした。ただ耕一は昨日又三郎にあんなひどい悪戯をされましたのでどうしても今日は遭ってうんとひどくいじめてやらなければと思って自分一人でもこわか・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・それは下の平原の雪や、ビール色の日光、茶いろのひのきでできあがった、しずかな奇麗な日曜日を、一そう美しくしたのです。 子どもは、やどりぎの枝をもって、一生けん命にあるきだしました。 けれども、その立派な雪が落ち切ってしまったころから・・・ 宮沢賢治 「水仙月の四日」
・・・ 二十三日 日曜日。一宮家から吉田さんの at home day に行き、コスモポリタンに行く。小崎氏が来たので、芹野さんとAと四人で Whittier に行き和田に会い、三人で、メゾンに行き、小崎と和田をのこす、青木のことを小崎から・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・マルクスの思い出を書いている総ての人々が、なんと忘れがたい楽しさをもって気候のよい日曜日の大散歩の面白さを描いているだろう。『子供とマルクス』という本が書かれたほどカールは子供好きであった。そろそろ娘盛りになっていた娘たちはくらべるものなく・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・次の日曜日、人々が会堂から出かける所を見ては話した。かれはこの一件を話すがために知らぬ人を呼び止めたほどであった。今はかれも胸をなでた。しかるにまだ何ゆえともわかりかねながらどこかにかれを安からず思わしむるものがある。人々はかれの語るを聴い・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
・・・山の手の日曜日の寂しさが、だいぶ広いこの邸の庭に、田舎の別荘めいた感じを与える。突然自動車が一台煉瓦塀の外をけたたましく過ぎて、跡は又元の寂しさに戻った。 秀麿は語を続いだ。「まあ、こうだ。君がさっきから怪物々々と云っている、その、かの・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ 七月十日は石田が小倉へ来てからの三度目の日曜日であった。石田は早く起きて、例の狭い間で手水を使った。これまでは日曜日にも用事があったが、今日は始て日曜日らしく感じた。寝巻の浴帷子を着たままで、兵児帯をぐるぐると巻いて、南側の裏縁に出た・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・ ある日曜日に暇を貰って出て歩くついでに、女房は始めてツァウォツキイと知合いになった。その時ツァウォツキイは二色のずぼんを穿いていた。一本の脚は黄いろで、一本の脚は赤かった。髪の毛の間にははでな色に染めた鳥の羽を挿していた。その羽に紐が・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
・・・海も、森も、村も、人も。日曜日になりまして、お寺の鐘が響きますと、昔の記念のような心持が致します。その日には昔からの知合の善い人達がわたくしの部屋の戸を叩きに参るのでございます。その人達はお寺へ参るような風で、わたくしの所へ参りますの。曠着・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
出典:青空文庫