・・・ と衝と立ったが、早急だったのと、抱いた重量で、裳を前に、よろよろと、お民は、よろけながら段階子。「謹さん。」「…………」「翌朝のお米は?」 と艶麗に莞爾して、「早く、奥さんを持って下さいよ。ああ、女中さん御苦労でし・・・ 泉鏡花 「女客」
・・・信也氏が早急に席を出た時、つまの蓼を真青に噛んで立ったのがその画伯であった。「ああ、やっと、思出した……おつまさん。」「市場の、さしみの……」 と莞爾する。「おさらいは構わないが、さ、さしあたって、水の算段はあるまいか、・・・ 泉鏡花 「開扉一妖帖」
・・・軽々しい否定は早急な肯定よりもはるかに有害であるからである。これは実験的科学を研究する者に周知の事である。また往々にして忘却される事である。もっともこういうたんねんの吟味をするにはかなりの手数と時間を要する。それかと言って、いつまでもなんら・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
出典:青空文庫