・・・ その明くる日、太陽は、よほど深く考え事があるとみえて、終日、顔を見せませんでした。 小川未明 「煙突と柳」
・・・ 明くる日になると、おじいさんは、疲れてこたつのうちにはいっていられました。太郎は、お母さんやお父さんと、おじいさんの持って帰られたかにを食べようと、茶の間にすわっていました。お父さんは小刀でかにの足を切りました。そして、みんなが堅い皮・・・ 小川未明 「大きなかに」
・・・ その日の昼過ぎから、沖の方は暴れて、ひじょうな吹雪になりました。夜になると、ますます風が募って、沖の方にあたって怪しい海鳴りの音などが聞こえたのであります。 その明くる日も、また、ひどい吹雪でありました。五つの赤いそりが出発してか・・・ 小川未明 「黒い人と赤いそり」
・・・彼等は、夜のうちに、死んだ友をことごとく片づけて、明くる日は、さらに新しく生活戦を開始すべく、立直っているように見えたからでした。 昔、読んだスタンレーの探検記には、アフリカの蛮地で兇猛なあり群に襲われることが書いてあった。たしかに、猛・・・ 小川未明 「近頃感じたこと」
・・・その夜眠って、明くる日になって目をさますと、いつのまにか自分はつばめとなっていた。これは不思議だと思っていると、昨日のつばめが飛んできた。そこで二人は、南の国を指して雲をかすみと旅立った。 そんなこととはすこしも知らない、村の人々は、乞・・・ 小川未明 「つばめと乞食の子」
・・・そのほばしらに止まって命が助かりました。私は、太郎さんにそのことを知らせにまいりました。と、つばめがいうと、太郎は夢がさめました。その明くる日、一羽のつばめが古巣にきて、さびしそうにしていましたが、晩方、どこにか飛んでいってしまいました。・・・ 小川未明 「つばめの話」
・・・けれど、まだ彼女は、人形のことを思いきることができませんでした。明くる日、おみよは学校へいって先生に問うたのであります。「先生、どんな場合にでも、ものを盗むということは悪いことですか。」「ものを盗むということは、いちばん悪いことです・・・ 小川未明 「なくなった人形」
・・・ そういって、正ちゃんは、眠りましたが、お姉さんは、なかなか眠れませんでした。明くる日の朝、みんなが、テーブルの前にすわったとき、「あんなことで、起こすものじゃなくてよ。」と、正ちゃんは、お姉さんにしかられました。ところが、その日の・・・ 小川未明 「ねことおしるこ」
・・・ おばあさんや、娘は、宝石商が寝てしまってから、なお起きて仕事をしていました。 明くる日はいい天気でした。宝石商は、勇んで旅立ちの支度にかかりました。「いろいろお世話になりましてありがとうぞんじます。なにかお礼をすればいいのです・・・ 小川未明 「宝石商」
・・・ 明くる日から、姉は、狂人のようになって、すはだしで港の町々を歩いて、弟を探しました。 月の光が、しっとりと絹糸のように、空の下の港の町々の屋根を照らしています。そこの、果物屋には、店頭に、遠くの島から船に積んで送られてきた、果物が・・・ 小川未明 「港に着いた黒んぼ」
出典:青空文庫